「きく」には同訓の漢字が幾つかあります。「効く」「利く」「聞く」「聴く」「訊く」がそれに当たります。
では、それぞれの「きく」には、どのような違いがあるのでしょうか。今回は、これらの違いについて解説していきます。
5つの「きく」は大きく2つに分けることができます。「効く」「利く」と「聞く」「聴く」「訊く」の二種類です。
まずは、「効く」と「利く」の違いについて解説します。
「効く」と「利く」の違い
見分けるポイントは
で使い分けます。
「効く」と「利く」の意味は
【利く】 能力を十分に発揮する
となります。
詳しくそれぞれの言葉について解説します。
「効く」
「効く」は、辞書には「利く」と同じで使われていることが多いですが、効果が出ることや作用がきちんと現れることという意味が強い言葉です。
「効く」は、効果があると言い換えられるときに使うと覚えればOKですね。
例文
パンチが効く
宣伝が効く
つぶしが効く
ブレーキが効く
「効」という漢字は、「まなぶ」と「手でたたく」を表す象形文字からできています。これは「手本としてまなばせる」という意味があり、そこから「まなぶ」「良い結果がえられる」などを意味するようになりました。
また、「効」を使った熟語には、「効果」「効能」「効率」などがあります。
「利く」
「利く」は、機能が働くという意味の他に、可能であるという意味があります。
また、間に入って世話をしてやるや、まとまるように話をつける・技能がすぐれていて腕が立つという意味もあります。
「利く」は、何かしらの機能がある場合に使うと覚えておけばOKということになりますね。
例文
このベッドはスプリングがよく利く
機転が利く子だ
多少の無理が利く
この店はツケが利く
学割が利く
融通が利く
顔が利く
「利」という漢字は「穂先がたれかかった稲」と「鋭い刃物」の象形文字からできています。
これは「鋭い刃物で土をたがやして稲を作る」ことを意味していて、そこから「するどい」や「役立つ」などの意味をもつようになりました。
また、「利」を使った熟語には、「便利」「利用」「利益」などがあります。
「効く」と「利く」の違い
「効く」と「利く」の違いは、「効く」には効果があるという意味が強く、「利く」は、それ以外の機能があったり可能であったりする場合に使われると理解しておけば問題ないでしょう。
「〜の効果がある」と言い換えられれば「効く」と使えば良いということになります。
「聞く」「聴く」「訊く」の違い
2つ目の「きく」は、「聞く」「聴く」「訊く」の違いになります。この3つの違いは、
となります。ききかたの違いで「聞く」「聴く」「訊く」を使い分けていきます。
それぞれの簡単な意味は
【聴く】 意識して対象の音を感じ取る
【訊く】 尋ねたり問いただしたりして明確にする
きく内容をどれくらい知りたいのかによって使い分けられそうですね。では、1つ1つ詳しく見ていきましょう。
「聞く」
「聞く」は音や声を感じ取るという意味があります。
ここでの知覚的な内容には、人の話も含まれますが、単なる物音もここに含まれます。
だから、「聞く」は最も一般的な音を知覚することに使われ、意識せずに何となく聞くことを意味しています。「聞く」で表される「聞いている内容」は、どの程度であるかはそのときの状況や人により異なります。
「聞」という漢字は、「門」の間に人の「耳」が入っている様子を表しています。「門を開いて耳を澄ます」姿から、「人にたずねきく」という意味になりました。
ただ、「聞く」の表す範囲は最も広く設定されていて、人にものを尋ねるだけでなく、他人の意見を受け入れたり、誰かの相談を受ける際などにも使われます。
例文
講義を聞く
仲間の意見を聞く
香を聞く
「聴く」
「聴く」は「聞く」の状態より、特に意識して対象の音を感じ取ろうとすることを意味しています。
「聴く」ときには、相手のしぐさや表情を読み取り、言葉と気持ちを感じ取ることをしています。音楽鑑賞など、そのことに集中してきくときによく使われますが、スピーチや相手の事情を聴くなどといった心を向けてきく場合にも用いられます。
「聴」という漢字は、「耳」という字に「まっすぐな心」を表す部分を付け加えてできています。
つまり、「まっすぐな心で耳を傾ける」という意味が込められていることになります。この「まっすぐな心で」というのがキーポイントで、相手の話を心を傾けて聞くというニュアンスが強く現れます。これは、「聞く」という漢字にはない意味付けになります。
例文
国民の声を聴く
お客様の意見を聴く
「訊く」
「訊く」は自分の疑問を明確にするために、分からない尋ねたり、問いただしたりするという意味があります。
「訊」の漢字は、「言う」という部分に「速い」を表す部分を付け加えてできています。
つまり、「次々に素早くたずねる」という意味をもつ字ということになります。
相手に質問するという意味は「聞く」にもありますが、「訊」の字を用いることで、より強い調子で尋ねたり、問いただしたりするニュアンスが強くなります。
これは、厳しく追及するという意味の「訊問」などという言葉からもうかがえます。
例文
迷って道を訊いた
道順を訊く
本音を訊く
「聞く」「聴く」「訊く」の違い
3つの「きく」をもう一度整理すると
【聴く】 相手を理解しながらきく
【訊く】 知るためにきく
となり、【聞く】<【聴く】<【訊く】という順番に聞き方が強くなります。
ただ単に「聞く」、相手の立場を理解しながら「聴く」、知りたい答えを明確にするために「訊く」という違いが分れば、3つを状況に応じてうまく使い分けることができます。
まとめ
「効く」「利く」「聞く」「聴く」「訊く」と5つの「きく」について解説をしました。
効果か機能かで使い分ける
②「聞く」「聴く」「訊く」
訊く強さ手使い分ける 【聞く】<【聴く】<【訊く】
効果か機能かで使い分ける「きく」と、きき方で使い分ける「きく」があることが理解してもらえたでしょうか。
きき方の違いを理解して、正しく伝えられるようにしていけば、様々な「きき方」が変わってくるかもしれませんね。